DXを押さえることで、今起きている変化を理解する!
本日のテーマは、DX(デジタルトランスフォーメーション)。
IT業界にいる方は、確かに聞いたことあったりしますよね。
しかし、いまいちピンときませんよね。
会社で経営層の口からよく聞くんだけど…中身はいまいち…
私も全く同じ状態でした。
ただ、ある本を立ち読みしたことをきっかけに色々調べて見たところ、
SEは知っておくべきだ強く感じましたので記事にまとめることにしました。
DXについて調べてみると、なんせ定義がサイトによって異なったり、動画や本でも「スバリこうだ!」という説明がなく、なんだか抽象的な説明ばかりでよくわかりませんでした。
そこで今回は、DXについて私が皆さんに替わり、様々な本と資料、動画を調べまくった結果を共有したいと思います。
このブログポストをシリーズのDXを読むだけで、
DXについてスパッと理解し、他人にも説明できるようになります!
そして、日本にはいかに不完全なDXがはびこっているかを理解できるようになります。
自分の会社の経営者が本当にDXを進めようとしているのか、その真贋を見極めることだって可能です。
なぜならDXは、みんなよくわかっていないのです。
ITベンダーのバズワードを使ったお金儲けに踊らされてしまっている経営者・社員がどれだけ多いことか。
つまり、DXを真に理解できていると、他のSE・技術者とめちゃめちゃ差がつきます。
この記事でわかること
- DXの定義がスッキリ理解できる!
- DXがなぜ今重要視されているかがわかる!
5年〜10年の中長期的な未来予測が手にいれば、今後どのようなSEが求められていくのかわかりますね。
一定程度の確度の未来予測が手に入れば、これ以上強力な味方は考えられません。
答えから逆算して問題を解くのですから、最短距離を一直線。
差がつかないはずがありません。
さらに、直近で転職を考えられている方はどのような資格やスキルが今後重宝されていくかもハッキリとわかるようになるので、転職して年収はアップを狙っている人は必見です。
転職は全然考えていないという方も、SEである以上スキルを磨かずには居られません。
そんなシーンで役に立つ「今後すくなくとも5年のトレンドを押さえた未来地図」は持っていて損はないでしょう。
量が多くなってしまったので前後編にわけたいと思います。
この記事の前編の目次は以下の通りです。
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前編ではDXの定義となぜ必要なのかの概念の説明が中心です。
後編ではDXを踏まえてどのような行動戦略をとるべきかが中心となっています。
さぁ、前置きは以上にして早速、DXを知り、自立できるSEになるための旅へ出発しましょう。
DXの定義
まずはDXの定義を押さえましょう。
何事も言葉を理解する所から始めるのは、概念を理解する上で、非常に的確なアプローチです。
まず、経産省が出している定義を紹介します。
しかし、これは参考です。
こんな定義の説明になってしまっているから、みんな混乱しているんだということを実感して頂くためだけに紹介します。
企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
DXレポート 第1章
はい、この塊、一文になっています。
控えめに言うと難解な文章に仕上がっています。修飾マシマシの、情報山盛りですね。
カタカナ用語を具体的にしようとカッコで具体例を出していますが、
そのカッコがいい感じにノイズになり、主旨が入って来にくいです。
とにかく最後の文章、競争上の優位性を確保することがゴールだ、ということだけ覚えてください。
さて、この定義を一番わかりやすく解説していたのが、下記のYoutubeで公開されている友村普氏の動画です。
動画内のセリフを引用してみたいと思います。
DXとは デジタル化を使って、楽してお金を儲ける、その体質を作る。
わかったようなわからないような感じですね。
動画を見ていただけるとスッキリと理解できると思いますが、
ここでは見る時間がない人のためにざっくり解説したいと思います。
この定義はDXに3つの段階があることを示しています。
- 第一形態:今の業務やデータ、体験などをとにかくデジタル化。
- 第二形態:そのデータや仕組み化、デジタル化したものでお金を儲け。
- 第三形態:さらにそれの中で生み出されたデータを活用して、自らの企業体質・商売を変えていく。
具体例を見てみましょう。
例えば、ワールドクラスの企業、Amazonにこの段階をに当てはめてみます。
- 第一形態:ショッピングという体験を完全にデジタル化
- 第二形態:店舗がない→土地代無し→人件費が浮く→拡大が容易に。世界規模で展開。ガッツリ儲かる。
- 第三形態:儲かる→利用者が増える→客の購買データなどの情報がどんどんたまる。たくさん情報が貯まると、何がいつどのくらい必要になるのか、かなり正確にわかるようになる。これを利用して、最小限の在庫を持つようになる。更にコスト削減分を値下げとして反映させる。増えた利用者向けに別のビジネスを始める(FBAやkindle DPAなど)
いかがでしょう。
DXの成長過程にあてはめると、Amazonが何をデジタル化し、それによって本屋といった既存の競合店とくらべて、どんな優位性を得られたかがよく分かると思います。
え?日本企業は無いの?
という皆さんのために動画内で紹介されていた事例を見てみましょう。
DMMという会社のパターンです。
現在では多角的に経営しすぎて、もはやなんの企業かさっぱりわかりません。
しかし、その状態こそがDMMがDXに成功している何よりの証左です。
- 第一形態:メイン事業の書籍レンタルサービスをデジタル化
- 第二形態:本を1度スキャンして、それをネットで貸し出し、期限が来ると自動で読めなくなる、という仕組みを作り、手動で作業するよりもコスト削減。→売上拡大。
- 第三形態:どんな年代の人がどんな本を読んでいるか、というデータをもとに、別の事業への誘導を開始。例えば、野球漫画をたくさん呼んでいる人に、自社で展開している野球ゲームのおすすめするなど。
このように、本業をデジタル化を通して、お金(稼ぎ)を得て、データを蓄積していきます。
得られた稼ぎやデータを活用してさらに他事業を展開します。
そして、そういった他事業へ展開を通して企業体質(考え方)を変革していくこと、それがDXの本質です。
冒頭上げた不完全なDXは、第一形態で終了してしまっていることを指して使用しました。
経営者が、「うちも何かDXするぞ!」といったときに、行われるのが第一形態:デジタル化になります。
しかし、多くのDXはここで終わってしまっています。
「え?DXしてるよ、デジタル化」が最も多い経営層の勘違いとしてIPAも動画で解説しています。https://youtu.be/GqoyKHWKZ_s
デジタル化はあくまで入り口でしかありません。
ドラゴンボールでいう17号を取り込んだだけのセルと同じで、形態も実力もベジータに圧倒されるレベルであり、あまりにも不完全です。
DXの本質はあくまで体質を作り変えることであって、第一形態:デジタル化、第二形態:ビジネス化はその手段に過ぎません。ここをしっかりと押さえておくことで、DXについて経済産業省の提唱する定義を理解したことになるのではないでしょうか。
DXの歴史
DXについては、どこからはじめてどこがゴールなのかは理解頂けたと思います。
さて、次はDXについて誰がいつ言い始めて、今どういう状況にあるのかを整理したいと思います。
DXという言葉自体は、スウェーデンのストルターマンという当時の大学教授が2004年に提唱した概念となります。
参考:原文「Information Technology and the Good Life」
今から約20年前で携帯電話のパケ放題が始まった年です。
まだスマホではない携帯電話でやり取りしていた時代と考えると、ストルターマンは20年先を見ていたのかもしれません。
この言葉が日本でにわかに注目され始めたのは、2018年に経済産業省が発表したDXレポートがキッカケです。
参考:DXレポート
この2018年の57ページある、DXレポートの概要について、とても砕けた表現でまとめると次のようになります。
「皆さん、とっても驚くべきことがわかりました。大変危険な状態です。このまま今稼働させているシステムを、問題なく動いているからという理由で使い続けた場合に恐ろしいことがおきます。なんと2025年以降、その老朽化したシステムを維持するために年間12兆円の経済損失が発生します。良いですか皆さん。手遅れになる前に、とっととそのシステム刷新してください」
年間12兆円と言われても、なかなかピンと来ません。
こういうときは、1人あたりに計算しなおしてみると実感が湧きやすいです。
国民を1億2000万人だとして、一人あたりに換算すると年間10万円、毎月約8300円くらいをロスするイメージです。
いきなり定常的に8000円も出費が増えるのはかなりつらいものがあります。
一人あたりなので、4人家族ですと月3万3000円。すごい負担になりますね。
経産省が焦るのもわかります。「失われた30年」があっという間に「失われた40年」になりかねません。
2020年に入ると、経産省がまた新たな提言をまとめた、DXレポート2を発表します。
参考:DXレポート2
その内容は、これまたざっくり誇張しつつ紹介すると、下記のような内容です。
「そろそろみんなDX始めてるよねーと思って調査したら、ほぼ何もやっていないということがわかりました。皆さんには、”安西先生がアメリカに言った谷沢を久しぶりに見たときのセリフ”を言わざるを得ません。
まるで成長していない
スラムダンク 安西先生
みなさんがあまりにも出来ていないので、前回のレポート見直しました。
確かにいくつか良くない点があるのがわかったので、訂正します。
まず、システムの刷新ばかりがクローズアップされていますが、システムの刷新は手段であって目的ではありません。
そこ履き違えないで頂きたい。
最初のレポートにもそう書いている。数字だけでなく本質を見てほしい」
第一回のレポートはかなり衝撃的だったから、みんなに響いただろうなぁーと調べてみたら、思ったよりもみんな取り組んでなくて焦っている、という状態です。
また、この時期はコロナとの戦いが本格化している時です。
経産省はコロナをキッカケに見直しがかかると思っていたようですが、これも経産省の想定通りには行かなかったようです。
実際、大企業のような体力のあるところも、中小企業もまずは通常業務をどうやって回すかに気を取られていました。
経産省はそれをきっかけに効率化や不要な業務の見直しが入ると想定していた様子がレポートにも書かれていましたが(※)、そうはならなかったようです。
※ DXレポート2 2.1章:DX 推進指標の自己診断から読み取れる我が国 DX の現状
さて、その後2021年、2022年に追加レポートであるDXレポート2.1,2.2をそれぞれ公表します。
参考:
DXレポート2.1(DXレポート2追補版)
D X レポート 2.2 (概要)
しかし、衝撃の2018年、怠惰に気づいた2020年のレポートのような問題提起というよりは、IT業界自体の産業構造の問題の指摘や、DX推進体制の理想的な形、考え方を示すにとどまっています。
つまり、もうすでに考え方は説明しきったから、やる・やらないはあなた達次第ですよ、と言っている状態です。
2022年にはDX認定銘柄などといったDXを行っている会社を目立たせてインセンティブを与える方向の調整が入っていることからもそれがわかります。
日本でのDXは2018年にいきなりぶち挙げられ、盛り上がりを見せるました。
以降その重要性に気づき対応した企業は躍進を遂げています。
一方で、遅々として進まない企業との二極化が進んでいます。
これが日本のDXの歴史と今の状況です。
海外のDX事情
一方海外ではその様相が異なります。
例えばアメリカでは、民間企業は実質8割以上がDXに取り組んでいます※。
一方アメリカ政府のDXは日本と同様、かなり遅れています。
※ DX白書2021 第一章 DXへの取組状況
ヨーロッパの小国エストニアは政府期間のDXが驚くほど進んでおり、デジタル政府としてとても有名です。
もし、エストニアに起業しようとすると、Webだけで完結する20分程度の手続きを行うだけで、エストニアに会社を持つことができます。
参考:Digital transformation as a tool | Florian Marcus | TEDxTartu
このように、民間か、そうでないか、大国か、小国かでもDXの進み具合にだいぶ濃淡がある状態です。
この差の理由はなんでしょうか。
海外の民間企業でみるより、政府(つまり国)で比較してみると分かり易いので、そちらで説明してみます。
本質的には官民で同じことが起きています。
世界でDXが進む国は基本的に、小国が多いです。
これは、2つの面から、小国がDXしやすいということが説明できます。
1つめ、国そのものに魅力がない
大変に誤解を生む表現であることは十分承知していますが、これは立派な動機になりえます。
つまり、黙っていても人が集まってくる大国であれば今の仕組みを変える動機がないのです。
逆に小国は黙っていては隣国に人が出ていってしまう。
国そのものに資源や世界的な観光地、イメージ(ブランド)などがあれば別ですが、それがない国はどうしたらいいのでしょうか。
そう、行政サービスを変えるのです。
人気の国はたいていビザや入国手続きが面倒です。
手続きが面倒だといっても、人はどんどん集まってくるので、直そうとする動機が生まれないのです。
そういった人気者の怠慢の隙をつくかのように、小さな国でもDX推進派の国は政府の各種手続きをITの技術を使って簡素化します。そうやって便利だなと思わせ人を集めたいのが思惑です。
なぜ国が人を集めたいかと言う理由は、税金です。
国が安定するためにはお金が必要でそれにはその国で生活してくれる人を増やすのが一番の近道だからです。
2つめ、利害関係者が少ない傾向がある
これは、まさに既得権益と呼ばれるものと密接に関わってきます。DXの定義の通り、DXは体質を変えることが最終的な目標となります。
この目標を達成するためには、たくさんの意思決定をする必要があります。
例えば、ハンコをなくして全部電子化する!という第一段階のDXを実現をしようとすると、ハンコ業界から猛烈な反発が発生します。
国の規模が小さければ、抵抗勢力(つまり既得権益者)が多くないため、既得権益を破壊するような改革だとしても、押し通りやすくなります。ここが大国との大きな差です。
大国政府で行おうとすると、歴史と権力を持った様々な既得権益者が登場し、全力で抵抗してきます。そのため意識決定が遅くなり、遅々としてDXが進まないのです。
大国を大企業、小国を中小企業に置き換えて考えるとしっくりくると思います。
大企業も大国と同様、なまじ規模が大きいため、社内の改革を行おうとすると抵抗勢力が現れたり、そもそも現状維持で利益が出ているんだから、変更する必要がないと考えがちです。
中小企業自体は意思決定の機敏さは持ち合わせているものの(社長ワンマンスタイルが多く)、そもそもDXへの理解が低かったり、必要性を感じていない旧態然とした姿勢が多いです。
しかし、一旦社長が理解しその方向に舵を切っていくことができれば、フットワーク軽く転換できる可能性があります。
この中に含まれていないベンチャー企業は、そもそも仕組みを0から作らなければならないため、最初からあるべき姿をイメージして描ける分とても有利です。やり方が決まって無いから抵抗勢力もいません。
DXという点ではベンチャーが有利であることは間違いありません。
政府のDXの状況は、大国の改革は既得権益者やそもそも動機がなく遅れがちです。
人が集まりにくい国は、危機感を持ちDXを推進して、DX先進国と呼ばれるほどになっています。
海外の民間企業では、DXの必要性を感じて実際にDXに取り組んでいる企業の割合は、
日本の取り組み状況と比べると全体的に多い傾向があります。
前編のまとめ
本記事では、DXの定義と国内・海外の動向を確認してきました。
後編では、それらを踏まえてSEがどのような戦略を取るべきか考えて行きます。
後編もぜひ合わせてご覧ください。