中国古典である菜根譚のある種の注釈本とも言える守屋洋さんの「世界最高の処世術 菜根譚」(SB Creative)を紹介してきます。中巻の続きです
事前にすべきこと
脱出ルート確保が先
満腹したあとで味のことを考えても、もはや、うまいかまずいかの識別すらつかなくなっている。房事のあとで男女の交わりを思っても、もはや、そんな欲情はどこかに消し飛んでいる。 いつも事後の悔惧を思い起こして、事前の迷いに対処すれば、それなりに腹もすわって、誤りをなくすことができるであろう。
世界最高の処世術 菜根譚
この章は、実行する前の計画のうち、何が一番大事かを教えてくれています。
それは、「その行動の結果、最悪何が起こるかを想定しておけ」、ということです。
最悪を想定しておけば、それを回避するために事前に計画が立てることでしょう。
これは「死亡前死因分析」という名で概念としても存在しています。
やり方は簡単で、何か重要な決定に立ち至ったとき、まだそれを正式に発表しないうちに、その決定をよく知っている人たちに集まってもらう。そして、「いまが一年後だと想像してください。私たちは、さきほど決めた計画を実行しました。すると大失敗に終わりました。どんなふうに失敗したのか、5 ~ 10分でその経過を簡単にまとめてください」と頼む。
ファスト&スロー: あなたの意思はどのように決まるか?(下)』 ダニエル・カーネマン
クラインはこの方法を「死亡前死因分析(premortem)」と名付けている。
このように、新しいと思っていたものが、実は古典の教えの現代語訳というのはよくあります。
というよりも、「前回」お話した通り、このような焼き直しが多々見受けられるのも、人間の精神は古代からあまり成長していない証拠と言えるでしょう。
話を戻します。
実行する前に悩む場合、まずはその行動をした時の最悪を考え、それが受け入れられるものなのか、それとも、回避できるのか、あるいは発生確率を下げることで受け入れることができるのかをしっかりと考えようというのがこの教えです。
例えば、新しいパソコンを買うかどうか迷っているのなら、そのパソコンで失敗したケースを考えてみるといいかもしれません。
実はスペックが足りなくて目的のゲームが動かない、とか、数日しか経ってないのに落として画面を割ってしまって使えなくなってしまう、とか。
それが想定できていれば最初からケースを買うとか、スペックは余裕をもたせるとか、そもそも買わないなど色々検討の幅が広がるのではないでしょうか。
その上で、買うと決断したのであれば、最悪のことはもう想定外ではありません。
人生を上手に生きる
幸せとは?
子どもが生まれるとき、母親の生命は危険にさらされる。財産が多くなれば、それだけ泥棒に狙われる。どんな幸せも不幸のタネにならないものはない。 貧乏だと、極力むだ使いを避けるし、病気がちだと、ふだんから健康に気をつける。どんな不幸も幸せのきっかけにならないものはない。 幸せも不幸も同じことだ とみなし、喜びも悲しみも忘れてしまうのが、達人の生き方である
世界最高の処世術 菜根譚
幸せは、不幸と表裏一体であると、といた章です。
これは道教の影響を受けていると言えます。
名と身とは孰(いず)れか親(した)しき、身と貨とは孰れか多(まさ)れる、得ると亡(うしな)うとは孰れか病(うれ)いある。是の故に甚だ愛すれば必ず大いに費(つい)え、多く蔵すれば必ず厚く亡う。足るを知れば辱しめられず、止(とど)まるを知れば殆(あや)うからず、以て長久なる可し。
『老子』44章
ざっくり訳すと下記となる。
「”名声”と”体”、どちらか大事だろうか?”体”と”お金”どちらが大事だろうか?「何かを得ること」と「何かを失うこと」どちらが悲しいだろうか?たくさん欲しがれば大いにお金を使い、たくさんお金を集めれば必ずたくさん失う。”今で十分であること”、”自分欲望を止める”ことを知れば失敗しない。平穏長く暮らすことができるだろう」
結局、十分で有ることを知らないことが諸悪の根源なのだ、と説いています。私の大好きな考えです。
また、ある統計でも年収800万を超えたあたりから、幸せに感じるピークを超え、幸せと年収が比例しないという研究結果も出ています。
上座部仏教でも、「この世は苦しみ」であると説いており、幸せだろうが不幸せがベクトルが違うだけで、結局同じものであるという教えています。
これは人と比べるのではなく、自分が満ちたりた気分になることができる部分でやめることが重要であるということも教えています。拡大ばかりで疲れてしまった人の癒やしとなる、章なのではないでしょうか。
まとめ
もっともっと紹介したい章がありますが、一旦ここまでで!
いかがだったでしょうか。
感想を是非コメント欄や、Xで共有してください!
あなたのフィードバックが何よりの私のご褒美です。
ではまた!